今春の高校入試の概況①

進路状況について

 平成30年3月の公立中学校卒業者のうち、高等学校への進学率は98.5%で前年度と変わりありませんでしたが、全日制高校へ進学した割合が4年ぶりに80%台に下がりました。一方で、通信制高校への進学率が上昇しており、不登校生徒等の進学先として私立の通信制高校が選ばれている様子がうかがえます。
 また、全日制高校への進学状況を見ると、公立高校への進学率は前年度と同じ53.6%、一方で都内私立高校への進学率は31.6%で上昇傾向にやや歯止めがかかりました。

都立推薦入試について

 推薦入試の全体の倍率は2.78倍で、前年度の3.00倍よりダウン、H24年度入試以来6年ぶりに2倍台まで下がりました。
 男女別の普通科男子は2.82倍(前年度2.90倍)、女子は3.47倍(同3.64倍)、コース制2.15倍(2.50倍)、単位制普通科2.85倍(3.53倍)と普通科は軒並み倍率ダウンしたほか、総合学科2.22倍(2.55倍)、商業科1.73倍(2.53倍)、工業科1.79倍(1.90倍)など、総合学科や専門学科も多くの学科で倍率が下がりました。

都立一般入試について

①出願状況
 出願締め切り時で応募者が定員に達しなかった全日制の学校は、普通科(コース制、単位制含む)19校(前年度5校)、専門学科25校(同14校)、総合学科は3校(同1校)と、それぞれの学科で大幅に増加しました。特に商業科は9校中8校が定員割れという異常な事態になり、工業科でも15校中5校で定員割れになりました。願書差し替え後でも、普通科13校(前年度1校)、専門学科19校(同5校)、総合学科1校(同ゼロ)が定員割れのまま残りました。
 最終応募倍率は、左の表のように普通科こそ微減でしたが、それ以外の学科、コースでは大幅なダウンが目立ちました。コース制は11年ぶり、単位制普通科は16年ぶりに1.3倍台に落ち込み、商業科の0.9倍台、工業科の1.0倍台は過去にない低倍率です。
 また、二次募集・分割後期募集でも、前年度より約500人多い1647人という募集人数に対して、応募は1010人(倍率0.61倍)となり、いくつかの学校では三次募集も実施されることになりました。

②実質倍率の二極化
 都立全日制高校全体の一般入試における合格率は72.6%(前年度70.4%)とやや緩和されました。ただ、今春の入試の大きな特徴としては、合格者の数と募集人数の差があまりにも大きく、定員に達していない学校が例年より多く出たということです。これは志望校に偏りがあり、人気校が激戦になった一方で低倍率の学校が多数存在(中には全員合格の場合も)したためだと考えられます。
 実際、コース・単位制を除く普通科は男女ともに厳しい入試だったのに対し、それ以外は緩やかな入試であり、二極化した選抜状況になったと言えるでしょう。
 東京都の私立高校授業料助成金拡充により私立高校への入学に対する経済的負荷が軽くなったことで、都立と私立がある程度同じ土俵に並んだということがその背景にあると思われます。つまり、今までは私立も受検するがなるべく都立に入学してほしいという考えで安全圏での受検をするケースが多かったのが、私立高校進学という選択がしやすくなったことで都立は多少高めのレベルをチャレンジするという傾向の表れだと思われます。